改正社会福祉法では、一定規模以上の法人に会計監査人の設置が義務付けられました。会計監査人の役割とその監査の概要は次のとおりです。

 対象法人

●一定規模以上の法人(特定社会福祉法人)について会計監査人の設置が義務付けられます。
具体的な規模の基準については現在、厚労省にて検討中であり、平成28年10月頃の政令改正で決定される予定です。

※(2016/9/27) 社会福祉法人の会計監査人設置義務の基準案が示されました。 → 詳細はこちら

●これに関して、社会保障審議会福祉部会報告書(平成27年2月12日)では、次の範囲を義務付けの対象とすることが適当とされています。
  ①収益(事業活動計算書におけるサービス活動収益)が10億円以上の法人(当初は10億円以上の法人とし、段階的に対象範囲を拡大)
  ②負債(貸借対照表における負債)が20億円以上の法人

●厚労省での検討においては、最初から上記の「収益10億円以上」等の法人を対象とするか、まずは収益数十億円以上の大規模な法人を対象とし、その後「収益10億円以上」法人へと段階的に拡大するか、といったことが議論されているようです。

●なお、社会保障審議会福祉部会報告書では、当初は収益10億円以上の法人とし、段階的に対象範囲を拡大する旨も記載されており、収益10億円未満の法人も注意が必要です。

 対象期間

●会計監査人による会計監査が必要となるか否かは前年度の決算の数字で判断することになるようです。

●仮に、監査義務の発生が「収益10億円以上、または負債20億円以上」との基準となった場合で、ある法人の収益の状況が次のとおりであったとします(負債はいずれの年度も基準以下であったとします)。
平成28年度決算(平成29年3月31日)・・・収益  8億円
平成29年度決算(平成30年3月31日)・・・収益 12億円
平成30年度決算(平成31年3月31日)・・・収益 13億円
平成31年度決算(平成32年3月31日)・・・収益  9億円
平成32年度決算(平成33年3月31日)・・・収益 11億円
前年度決算の数字で当年度の監査義務の有無を判断するため、この法人の場合には、監査義務のある年度は、平成30年度決算、平成31年度決算、平成33年度決算のみということとなります。

●なお、改正社会福祉法で会計監査人設置義務が生じるのは平成29年度決算(平成30年3月31日)以降です。従って、平成27年度決算(平成28年3月31日)において収益または負債の規模が基準以上であっても、平成28年度決算(平成29年3月31日)の会計監査人監査は必要ありません。

 会計監査人の資格

●会計監査人となれるのは、公認会計士または監査法人のみとされています。

●会計監査人は法人からの独立性が求められています。公認会計士または監査法人であっても、次の者は会計監査人に就任することができません。
・法人の評議員、理事、監事、職員(元役員・元職員、配偶者などに関する制約もあり)
・法人の記帳代行業務、税務申告業務などを行う公認会計士・監査法人
・その他、法人と著しい利害関係を有する者

●会計監査人の任期は1年ですが、評議員会で別段の決議がない限り再任となります。

 会計監査人の役割

●会計監査人の役割は次の書類の監査(会計監査)を行うことです。
・計算書類およびその附属明細書
・財産目録

●会計監査人は監査を実施し、計算書類等が適正か否かの監査意見を記載した監査報告書を作成し、これを法人に提出します。
監査報告書のイメージはこちら(作成中)。

●会計監査を有効に実施するため、会計監査人には次の権限が与えられています。
・会計帳簿および関連資料の閲覧・謄写
・会計に関する報告要求
・法人の業務および財産の状況の調査

●会計監査人の監査報告書において「計算書類等は適正」とされ、また監事が会計監査人による監査の方法および結果が妥当とした場合、次のとおり一部の手続きが簡略化されます。
・監事による会計監査を省略可能
・計算書類について評議員会の承認が不要(評議員会への報告は必要)

 会計監査の対象

●計算書類および附属明細書のうち、会計監査人の監査の対象となるのは次の部分です。
・法人単位の計算書類(第1様式)
    −法人単位貸借対照表
−法人単位資金収支計算書
−法人単位事業活動計算書
・それに対応する附属明細書
−借入金明細書
−寄附金収益明細書
−補助金事業等収益明細書
−事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書
−事業区分間及び拠点区分間貸付金(借入金)残高明細書
−基本金明細書
−国庫補助金等特別積立金明細書

  ※法人単位の計算書類及びその附属明細書は拠点区分別の積み上げであるため、必要に応じて、拠点区分別の計算書類及びそれらの附属明細書についても確認の対象となります。

●財産目録のうち会計監査人の監査の対象となるのは次の部分です。
−貸借対照表科目、取得価額、減価償却累計額、貸借対照表価額

 会計監査の流れ

(作成中)